食道がんの重粒子線単独治療を受けて@

(食道がん臨床試験の記録)

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目 次 

はじめに

食道がんは、がんの中でも中々手ごわいがんである。 自覚症状が現れてから病院へ行った場合は、すでに転移している場合が多く、ステージ (病期)としてはV期に当るケースが多い。 病期は、0期からW期まで5段階に分類され、0期でEMRで治療できればほぼ100 %近く完治するが、それ以外の病期で完治を目的とする手術の完治率は平均30%台、 東海大学で60%台である。(東海大学幕内教授の著書による) 大阪府立成人病センターのデータによると、手術後5年生存率は、I期:89%、U期:63%、 V期:29%、W期:15%となっており、早期発見できなければかなりの確率で死を覚悟しな ければならない病気です。食道がんの進行度はこちらのサイトを参照しました。 診察を受けた時点で、手術は無理と診断されるケースもあり、実際、医薬品の研究開発 力で高い評価を得ている、Merck & Co., Inc., が非営利事業として提供している世界 で最も信頼されている医学書の一つといわれているメルクマニュアルで『食道がん』を 検索すると衝撃的な記事が掲載されている。 それによると「食道癌は転移するまで発見されないことが多く、死亡率の高い病気です。 5年以上生存できる人は5%未満です。・・・」とあります。 また、他の情報では「食道癌は日本では毎年1万2千人がかかり1万人が死亡します」 というのも見ました。 これらの情報を、突然眼にすると、多くの人がパニック状態になることは、容易に想像 できます。私の場合は、初診の段階でT期もしくはU期の初期と言われ、すでに進行癌 の可能性が高いと診断されましたが、転移さえなければ命を落とす確率は低いことが分 かり冷静に対処することができました。 ただ、その治療法は手術によって、食道を全部摘出し、胃を細く丸めて喉に引っ張り上 げる方法が標準治療とされ、周辺のリンパ節も広範囲に切除する、がんの手術の中でも 難度の高い手術です。手術後のリハビリも容易ではなく、この方法を選択するにはかな りの覚悟を要します。 数多くの食道がんに関する情報の中でMyMedというサイトは医療電子教科書を目指 していると標榜するだけあって、かなり詳しい情報が得られました。 この記録は重粒子線治療にたどり着くまでの経緯と治療の様子を公開し、私と同じ病に 襲われた人に、いくばくかの情報を伝えられればとの思いで作成しました。 しかし、私の受けたこの重粒子線治療は、「臨床病期I期胸部食道癌に対する炭素イオン 線治療の第I/II相臨床試験」と呼ばれ、粘膜下層の比較的浅いところに止まる癌でかつ リンパ節転移がない食道癌に対する重粒子線単独治療であり、肝臓や肺、遠隔リンパ節 などに転移がある場合は適応外となります。 さらに適格条件として ・組織学的に確認された胸部食道扁平上皮癌である。 ・壁進達度がSM1-3でリンパ節転移、遠隔転移のいずれも認めない。  すなわち病期がI期(T1bN0M0)である。 ・内視鏡で治療効果の評価が可能な病変である。 ・年齢は80才以下である。 ・PS(ECOG)は0-2である。注1.(身の回りのことは自分で何でもできる状態) ・本人に病名・病態の告知がなされており、かつ本人に同意能力がある。 これらの条件をすべて満たす必要がります。 その上、不適格条件として以下の条件が1つでも該当する場合は対象外となります。 ・食道病変が8cmを超える(装置の制約による)。 ・食道壁内転移を有する。 ・当該食道癌に対する前治療歴がある。 ・当該照射部位に放射線治療の既往がある。 ・活動性の重複癌を有する。 ・照射領域に活動性で難治性の感染を有する。 ・医学的、心理学的または他の要因により不適当と判断される。      (以上「放射線医学総合研究所」のサイトより引用) ********************************************************************** 注1. PS:Performance Status  0:   全く問題なく活動できる。   発病前と同じ日常生活が制限なく行える。  1:   肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は   行うことができる。   例:軽い家事、事務作業  2:   歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。   日中の50%以上はベッド外で過ごす。  3:   限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか   椅子で過ごす。  4:   全く動けない。   自分の身の回りのことは全くできない。   完全にベットか椅子で過ごす。 ********************************************************************** このようにかなり厳しい条件をクリアできて初めて治療を受けられたのであり、多くの 方の参考にはならない場合があることをお断りいたします。 その上、この臨床試験で食道がんの重粒子線単独治療を受けたのは、私が初めてであり 実績はゼロであることも充分承知していただく必要があります。 また、この臨床試験適格条件をクリアするには、早期に発見されることが必須であり、 そのためには毎年人間ドックで内視鏡検査を受ける必要があります。自覚症状がでてか らでは、V期と診断されるケースが多く、適格条件をクリアするのは、まず無理だと思 います。 お酒が弱かったのに訓練して強くなった人やタバコを吸ったことのある人は特に注意が 必要だと言うことを、この病気に罹った後知りましたが、そういう方は是非、定期的に 内視鏡検査を受けられるようお勧めします。 浅学非才の身で、医学常識ゼロの輩の記録なので、判断するときは自己責任でお願いし ます。

胃がんの経験、人間ドックでのチェック経歴 
10年前の6月、人間ドックで胃がんが見つかり、7月21日に入院し、8月12日に
退院した。 (胃がんの記録はこちら)
10年後、全く同じ経緯を辿り今度は食道がんで入院することになった。
人間ドックは、記録が残っている範囲で確認したところ、1985年から2006年迄
毎年東海大学病院で受けている。退職した翌年の2007年以降は、近くの湘南あつぎ
クリニックでチェックしている。東海大学病院での検診は会社指定で費用は会社持ちで
あった。

人間ドックを受けていなかったら多分10年前に胃がんで死んでいただろうし、今度も
65歳にならずにあの世へ旅立って行くことになっただろう。今回は見つかったと言っ
ても、そう楽観はできないが、死なずにすむ確率が上がったことは確実だろう。

発見から入院までの経緯

湘南あつぎクリニック東海大学病院重粒子線医科学センター病院 人間ドックこれまでの経緯  東海大学病院(20数年前から2006年まで)→湘南あつぎクリニック 2施設の違い  規模が圧倒的に違う。東海大は1日150人以上を扱い、流れ作業で検査が進んでいく。 患者の扱いも機械的でお客様を番号で呼び、家畜の検査をやっているのではないかと思う ほどである。家畜より手間がかからないのだから、もっと安くして欲しいくらいだ。 それに対し湘南あつぎクリニックは、3年ほど前にできた徳州会系の病院でPET/CT も備えた設備の整った病院であるが、人間ドックは1日最大4〜5人程度で、東海大学の 鶏小屋のような慌しさは無く、アットホームである。医師との面談も時間がたっぷりあり、 丁寧に応接してくれる。もちろん番号ではなく名前で呼ばれる。 内視鏡も追加料金無しで選ぶことができる。検診であれば、東海大より数段快適に目的を 達成できる。

湘南あつぎクリニックで食道がん発見
2008/06/10人間ドック(湘南あつぎクリニック)
妻が中々人間ドックを受けないので今年は一緒に受けることにした。
厚木市の補助もありオプションをつけても一人3万円程度で受けられる。
検査はスピーディに進み、10時頃には内視鏡検査を残すのみとなった。案内の看護婦が
「奥様は婦人科検診があるのでかなりお待ちいただくことになりますね」と言うほどで
あった。ここの内視鏡検査は鎮静剤を希望することができ、全く苦痛無しで検査を受け
ることができる。うとうとと眠りに落ち、検査が終わって起こされてもまだ朦朧として
いた。ベッドで少し休んでいたところ検査結果について医師から説明があるという。
この時、今回はかなり時間がかかったという気がした。
写真を見てギョッとした。10年前の胃がんを思い起こさせる塊が壁面からニュット顔を
出している。さらに画面が進んでいくとルゴールで染色した画面が出てきた。
またがんかと直感した。

内視鏡による所見(2008/06/10 16:05)
*************************************************
食道:気管分岐部 29cm,SCj 39cm,横隔膜面 40cm
陥凹性病変(陥凹底は結節集簇様)、ルゴールは不染→Bx1-4
33cmの陥凹性病変内に5mm大の透明調、無茎性隆起よりBx3
(壁内転移?)
sm以深浸潤と思われます。

Ut〜Ltまで小白苔多数付着(S/O食道カンジタ)→Ltの白苔よりBx5

胃:open type atrophy. 噴門唇軽度開大
  体上部前壁に2mmのIs polyp(fundic type)
十二指腸:異常なし
*************************************************
         impression
#食道Ca(Uc)
#食道カンジダ疑い
#萎縮性胃炎
#胃底腺ポリープ
**************************************************
(注)
SCJ:squamo-columnar junction 食道粘膜と胃粘膜との接合部

ルゴール不染:
正常食道上皮には、グリコーゲンが含まれており、ルゴールとのヨード反応により褐色
に染色されるが、癌ではグリコーゲンが含まれないので、染色されない。
食道がんになっているところは、ルゴールに染まらず、白い粘膜としてはっきりと観察
できる。

食道カンジタ:口腔内常在菌である Candida albicans が食道へ感染して起こる。
白色で斑状の扁平な隆起がたくさん出る。糖尿病やステロイド服用などで免疫力の低下
した時になり易い病気。
医師の話では、sm以深浸潤であればEMRでの治療は無理で全摘手術が適用となるとの
ことであった。生検の結果を見ないと確定的なことはいえないとしながらもT期か2期
の始めではないかとの診断であった。(生検の結果は16日に分かるとのこと)
この時点で、胃がんのときの状況と比べものにならないシビアな状況であることを理解
した。

帰宅後、食道がんがどのようながんであるのか、インターネットで調べれば調べるほど
憂鬱になった。
特に「メルクマニュアル」の記事は衝撃的であった。
以下 その記事の抜粋
********************************************************************************
『(経過の見通しと治療)
食道癌は転移するまで発見されないことが多く、死亡率の高い病気です。5年以上生存で
きる人は5%未満です。多くの人が初期の症状に気づいてから1年以内に死亡しています。
ほとんどのケースの食道癌は致死的なので、痛みと嚥下機能のコントロールを目的に治療
をします。この痛みと嚥下障害は、患者にとってもその家族にとっても生活を大きく脅か
すものです。
致死的な病気で生じる症状を参照

手術で癌を摘出すると、症状が軽減する期間は長くなりますが、完治することはまずあり
ません。食道癌は手術をする前にすでに転移しているためです。化学療法の単独または放
射線療法との併用療法を行うと、症状は改善し2、3カ月ほどは延命できます。放射線療法
と化学療法の併用療法の後に手術をすると治癒率が上がることもあります。その他の方法
は症状を軽減するためのみの治療で、食道の狭窄部位を広げてチューブ(ステント)を留
置したり、腸の一部を引き上げて食道バイパスを形成したり、食道を閉塞している腫瘍に
対して、高エネルギーの光線を照射して破壊するレーザー焼灼法などがあります。』
********************************************************************************

けんもほろろ、みもふたもないとはこのこと。
メルクマニュアルは権威のある信頼できるソースだと思っていましたが、この内容を見る
と食道がんがどの病期で発見されたか、病期別の治癒成績はどうなのか、また治療方法別
の治療実績はどうなのか等の情報がなく、層別がされないままの丸めたデータでの記述で
あり、一挙に信頼がなくなりました。
誰かが食道がんになって初めてこの情報を見たらと思うと、ぞっとすると同時にメルクと
いう世界的な企業に腹立たしさを禁じえなかった。このメルクの情報にもめげず手当たり
次第に検索した。その結果、私の場合、5年以内に死ぬ確率はイチローの打率を少し上回
る位ということが分かった。死が結構身近にあることを感じ、準備の必要性を感じた。

「食道がんです」と宣告されたときまず頭に浮かんだのは、前の会社在職中社長であった
宮崎さんのことである。
彼は、半年ほど前の2007年暮れに食道がんが見つかり、僅か2ヶ月前の2008年4月に亡く
なった。62歳であった。在職中私は彼の許で社長室長を務めていた。
彼は入社時酒は全く飲めなかったそうであるが、練習を重ねヘビードリンカーになって
いた。そのことが食道がんの有力なトリガーになったようだ。
(後で聞くところによると原発は脊椎がんで食道に転移したものと聞いた)
そういえば、私も酒が弱いのに父をはじめ妻や親戚一同全て酒が強いので、弱いといわ
れるのが嫌で呑み続け、今では一日も欠かさず呑むようになってしまった。20歳から
50歳までの喫煙とあわせ食道がんを誘発する生活を送ってしまったようだが、こんな
生活が食道がんの誘因になるとはこれまで知らなかった。まさに後の祭りである。

また、同期の中間君は3年ほど前、食道がんに罹り全摘手術を受け、命をとりとめた。
今は廃鶏のように痩せているが、ゴルフの腕前は常人の上を行くほどに回復している。
彼は熱心に全摘手術を勧めるが、どうも仲間が欲しいらしい。
インターネットでの検索
食道がんの名医
我が家の近くでどの先生に診ていただくのがベストか調べた結果、東海大学病院の幕内
先生の存在を知った。
名医navi-Japan(日本の名医) 
誰がどういう基準で名医と断定しているかは分からないが、このサイトに載っている
先生はかなりの有名人であることは確かなようである。
次に、病院別の治療実績を調べてみた。
            
●東海大学病院 消化器外科
 幕内博康教授(院長) (電話)0463・93・1121(神奈川県)
合計症例数は2400例を超えて全国有数。術後の5年生存率は内視鏡治療は97.2%、
手術では62.5%で、いずれも全国トップ
 
●国立がんセンター東病院 内科
 大津敦部長 (電話)04・7133・1111(千葉県)
化学放射線療法を積極的に推進。1期、2〜3期の臨床試験で手術に匹敵する成績。
手術不能の4期にも多数の臨床試験を実施・計画
 
●国立がんセンター中央病院 食道外科
 加藤抱一部長 (電話)03・3542・2511(東京都)
04年の治療数333例(うち手術135例)。外科、内科、放射線科、診断部門で合同協議。
患者の意思を尊重、科学的根拠をもとに治療決定
 
●順天堂大学順天堂医院 消化器外科
 鶴丸昌彦教授 (電話)03・3813・3111(東京都)
食道がん切除手術は年間100〜120例。進行がんには精緻なリンパ節郭清を行う。
早期のものには内視鏡治療を積極的に行っている
食道がんとその治療方法について
あらましを知る上で下記のサイトが分かりやすかった。
大阪府立成人病センターのサイト
このサイトは食道がんについて簡潔に要領よくまとめてあり、自分の病期がどれに当た
るか、その場合どのような治療法を選択できるのかが明確に分かる。ただ重粒子線治療
についてはまったく言及されていない。

食道癌の放射線治療について調べた結果、京都大学医学部附属病院放射線治療科のサイト
を見つけた。このサイトでは手術をしなくても放射線治療で食道癌を治すことができると
いうことを色々なデータを使って説明しており、京都大学ということもあり信じて良いの
かなと思った。しかし一方では放射線治療後手術で救済した事例も放射線での完治として
カウントされているとの情報もあり、EBMと喧伝するほどの資料がどこにあるのか、ど
のように判断すべきか迷ってしまう。N数の問題、病期・個人差による母集団の違いなど
エビデンスベースド(Evidence Based )と言えるほどの厳密さは無いと思わざるを得ない。
もっとも、EBMとは「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる
("conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence") 医療のあ
り方をさす。」という定義からすると統計的な厳密さは最初から考えていないのかもしれ
ない。いずれにせよ素人から見ると、それぞれの医療機関が発表している実績をどのよう
に評価すべきかはとても分からないというのが実態であるようである。
したがって、私が望んでいる治療をどこで受けられるか、その治療の方法・根拠が納得性
があり、それを選択した場合著しい不利はないかを私自身の頭で、判断するしかないとの
結論に到った。

その他、有効治療法として下記の方法があることを知ったが、治療方法・根拠とも納得性
があったのは重粒子線治療が一番で、他は打つ手がなくなったら考えることにした。
■ハイパーサーミアカフェイン併用化学療法樹状細胞療法丸山ワクチンBCG療法 WT-1療法HF10ヘルペス療法アデノウイルスベクターテロメライシンRexin-GAdvexin重粒子線陽子線4次元照射ノバリスフコイダン療法COX2-阻害剤

治療方法について
(進行別 がん標準治療)
がんサポート情報センター
大津 敦  国立がんセンター東病院内視鏡部長
安藤 暢敏 東京歯科大学市川総合病院副院長  が監修するサイト
食道がんの治療では、1期から3期にかけては、手術と化学放射線治療という二つの選択肢が
存在すること。治療法の選択においては、手術と化学放射線治療それぞれの長短、利益と不
利益を十分に理解して判断すべきであることを理解した。

(放射線療法)
食道癌の放射線治療について 国立がんセンター がん対策情報センター

京都大学医学部附属病院放射線治療科のサイト
食道がんの放射線治療について詳しく説明がでている。
がんサポート情報センター
一人の患者の事例を通じて化学放射線治療を宣伝するレポート。

(免疫療法)
人間のもつ免疫力(自然治癒力)を高めて病気を治療する療法。
なんらかの方法で白血球を活性化し、白血球が、認識していないウイルスなどの病原菌やガ
ン細胞などの“異物”を、改めて認識・識別させることによって免疫機能を活性化させ、白
血球による破壊・排除を目指す療法をいう。

 @自然免疫や獲得免疫を利用する免疫療法
 A免疫力を担っている白血球や抗体を利用する免疫療法
 Bガン細胞を攻撃する白血球や抗体を身体の中に増やしてやる免疫療法
等がある。

「食道がん」という言葉で検索すると最初に出てくるサイト。
インターネット検索を意識した宣伝臭の強いサイトで胡散臭さを感じた。

(代替医療)
代替医療とは、西洋医学以外の療法で、近年欧米を中心とした先進国で、再認識、再評価され
てきているという。
同期の鹿児島大学医学部丸山教授からも「ミサトール」が結構がんに良く効くと言う情報を戴
いた。また、フコダインなどの免疫食品の専門店があることも知った。

(粒子線(荷電重粒子線)治療)
国立がんセンター東病院のサイクロトロンを用いた陽子線治療システムを紹介している。
進行していない限局したがん病巣の治療に適している。重粒子線のことを知らなかった時点
ではこの療法を選択したいと思った。

(重粒子線治療 )
千葉大学基盤理学専攻 数学・情報数理学コース 教授中村勝洋さんのメールから、この治療を
知った。
生物効果が高く、酸素が無くても効果のある重粒子線は、がん細胞を殺傷する能力が強いため、
局所進行がんや、従来の放射線ではビクともしなかった酸素濃度の低いがんに対しても効果が
期待できることや、がん病巣周囲の組織に強い副作用を引き起こすことなく線量を集中できる
ことなどが分かり、現時点でがん治療にもっとも適した療法であると確信した。
世界で最初の重粒子線等を使用した放射線治療は、高エネルギー陽子線を用いたもので、その臨
床応用は、1954年にカリフォルニア大学ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)で陽子線
治療が、続いてヘリウム線治療、そして1975年にはネオン線治療が開始された。
日本では独立行政法人放射線医学総合研究所 (放医研、千葉市) で1994年6月に炭素イオ
ンを用いたがん治療の臨床試験が開始され、次いで、兵庫県立粒子線医療センターで、2002
年に医療認可の準備臨床試験として炭素イオン治療を行い、2005年1月、高度先進医療に認
可された。海外では、ドイツのダルムシュタット市の重イオン研究所 (GSI) で1997年に炭素
イオンを用いた治療が開始され、現在、ハイデルベルグ大学に医療専用の重粒子線治療装置を建
設中である。最も新しいところでは群馬大学で、群馬県との共同事業として、平成18年度に施
設の建設に着手し、平成21年度に臨床試験を開始することを予定している。
このように、重粒子線治療は実用に供されているのは世界でもまだ2箇所であり、食道がんの単
独根治治療を目指しているのは、放医研の重粒子医科学センター病院だけである。

下記のサイトで詳しい情報を得ることができる。
(財)医用原子力技術研究振興財団のページ
重粒子線治療の説明 
重粒子線がん治療装置 (HIMAC)の説明
粒子線治療の原理
兵庫県立粒子線医療センターのページ
群馬大学重粒子線医学研究センターのページ
重粒子と重粒子線について
(重粒子とは)
電子より重い粒子(原子核)の総称で(H、He、C、Ne、Si、Arなど)をいう。
加速する原子核によって中性子線、陽子線、炭素線、ネオン線などの種類がある。
(財)医用原子力技術研究振興財団のHPから
炭素原子核は陽子の12倍の質量があり、加速するためのエネルギーが多くかかるがその分がん 細胞に対する破壊力も大きくなる。 一般的に炭素線を重粒子線と呼ぶ。(以下重粒子線=炭素線と理解してください。) (重粒子線とは) 原子から電子を取り払い、イオン状態(プラスの電気を帯びた状態)にした荷電粒子を、高周波 によってマイナスの電圧を次々に発生させ、光速近くまで加速したものが重粒子線である。 最終的に治療室に入る前に光速の84%まで加速される。      (財)医用原子力技術研究振興財団のHPから               放射線医学総合研究所のHPから (重粒子線が通常の放射線より優れている理由) ガンマ線、エックス線、電子線などは体外から照 射すると、体の表面近くで 線量 が最大となり、 それ以降は深さとともに次第に減少しながら患部 を突きぬけ体の反対側まで影響を及ぼす。そのた め患部以外の正常な細胞もダメージを受ける。 また、患部中央部分の酸素が届きにくい細胞に対 しては効果が減殺されてしまう。 左図は、X線で肺がんを垂直方向と水平方向の2 方向から照射した時の模式図であるが、病巣の左 側と下側の健全な組織にもX線がかかり、当って 欲しくない脊椎も暴露している。反面、中央部の 病巣は、低酸素状態のためX線の効果が減殺され、 がん細胞が生き残ってしまう。 放射線医学総合研究所のHPから それに対し、粒子線はそのエネルギーによって人体内に入る深さ(飛程と呼ぶ)を調節でき、その 飛程の終端近くでエネルギーを急激に放出して止まる。(これをブラッグ・ピークという) 加速器で粒子のエネルギーを調節し、腫瘍の部分で粒子が止まるようにすれば、体表面から照射の 途中や患部の背後にある正常な細胞に殆ど影響を与えず、腫瘍細胞だけを殺傷することができる。
   
     (財)医用原子力技術研究振興財団のHPから                                  放射線医学総合研究所のHPから
また、生物学的な特性として、重粒子線は光子線や陽子線などに比べ細胞殺傷能力が高く、照射され
た細胞は放射線損傷から回復しにくい。さらに、通常の光子線治療では酸素濃度や細胞周期といった
要因が放射線感受性に影響を与えるが、重粒子線治療ではそれらの影響を受けにくいといった性質を
有しているので、放射線抵抗性腫癌にも、治療効果が期待できる。
   1) 大きながんの固まりの内部の低酸素状態にある細胞は、一般的に放射線抵抗性を示す。
  (X線やガンマ線では死ににくい)。 
   2) がん抑制遺伝子p537が正常に機能しないために、アポトーシス(細胞の自殺)や細胞分裂
   停止を起こす機能が阻害されている細胞は、放射線に抵抗性を示す。 
   3) がん遺伝子Bcl-2の働きによってアポトーシス(細胞の自殺)が抑制されている細胞は、放射
   線に抵抗性を示す。 
これらのうち、
低酸素状態の細胞と、がん抑制遺伝子p53異常細胞については、炭素イオン線などの重粒子線を照射す
るとがん抑制遺伝子p53の働きの有無によらず、同じように細胞が致死する。

ガンマ線やX線のような通常の放射線では低酸素状態あるいは無酸素状態に置かれた細胞は、正常な
酸素状態の細胞に比べて2〜3倍抵抗性を示すが、重粒子線ではこの酸素効果がなく、低酸素状態ある
いは無酸素状態であっても、正常な酸素状態にある細胞に対する効果と同様の致死作用がある。

(重粒子線治療の特徴)
 ・痛みを伴わない 
 ・臓器の機能や体の形態の欠損が少い 
 ・容姿、容貌を損なわず、傷跡も残らない 
 ・高齢者にも適用できる 
 ・副作用が少ない 
 ・早期なら根治可能 
 ・X線では治療困難な、深部がんにも適用できる 
 ・社会復帰までの期間が短い 

(粒子線(荷電重粒子線)治療と他の放射線との違い)
粒子線(荷電重粒子線(かでんじゅうりゅうしせん))治療とは、放射線治療法の総称で利用する
粒子の種類によって、陽子線治療、重粒子線治療、パイ中間子治療等に分けられる。

(重粒子線治療と他の放射線(陽子線、エックス線)治療との比較)
 重粒子線陽子線エックス線
(1)線量の集中性    ×
(2)線量分布境界の鋭さ ×
(3)生物学的効果
(4)低酸素がんに対する効果 ××
(5)放射線抵抗性がんに対する効果××
(6)分割照射回数が少ない ×
重粒子線治療の利点の一つは、腫瘍の形状に合わせて重粒子線を整形できる点である。 この治療では腫瘍の形状に適合するようにビームを成形する際の精度が極めて重要で NC工作機械を使って補償フィルター/患者コリメータ作成を自動化している。 HIMACではビームを成形する装置としてワブラー電磁石、散乱体、ならびにリングコリメ ータにより平坦な照射野を作り、リッジフィルターとレンジシフターによりブラッグピ ーク幅とレンジの調整を行い、4枚羽根コリメータ、多葉コリメータにより2次元照射野 を成形する。最も下流には補償フィルターが設置され、深さ方向のビームの補償を行う。  整形のため、治療計画から移送されてきたデータによって、重粒子線のビームの形を決 める患者コリメータ(真ちゅう製)とビームの深さを調節するボーラス(ポリエチレン製) を製作する。 患者コリメータはがん病巣だけに照射するよう照射方向の平面範囲を制限する。重粒子線 のビームはがん病巣の形状に合わせて開けられた穴のみ通過し、それ以外の範囲に重粒子 線が当らないようにする。ボーラスにより重粒子線の深さ方向の到達範囲を調節する。  なお、直径10cmを越える大きながんに照射する場合および高いエネルギー(深いがん) を利用する場合は、患者コリメータではなく、照射装置にある多葉コリメータを使用する。 上の図は、(財)医用原子力技術研究振興財団の資料に 追加説明を入れコリメータとボーラスの位置を修正した。   注)ボーラスの正式名称は「補償フィルター」です。 http://www.nirs.go.jp/research/division/radiological_protection/qa-01.shtml
癌に関する書籍
・アマゾンで本を探した。本屋で探すより効率的に目的の書籍を購入することができる。

 @「がんの最新医療」
   国立がんセンター総長 垣添 忠生著
   家内が勤める「フォルム画廊」の常連客で元理化学研究所の永井克孝先生が貸して
   くださった本でがんそのものの知識と最新の治療方法が包括的に説明されており、
   治療法選択の判断基準をどう考えるかの指針となった。
   (永井先生は東京大学医学部教授、理学博士、医学博士)

 A「いちばん新しい食道がんの本」
   東海大学病院長 幕内 博康著
   この本を読むと、EMRを含めた手術以外の選択肢はありえないと思ってしまう。
   事実、私が診てもらった東海大学医学部消化器外科千野 修先生も100%手術を
   勧めてくれた。

 B「防ぐ、治す食道ガンの最新治療」
   国立がんセンター東病院内視鏡部長大津 敦監修
   この本でも第一選択は手術であることが分かる。患者向けに易しく書き下ろした本
   で、図解してあるのでどんどん読み進めることができる。食道がん手術の大変さが
   実感できる図解つき。

 C「がん重粒子線治療がよくわかる本」
  重粒子医科学センター長 辻井 博彦、医学物理部長 遠藤 真広 共著
  重粒子腺治療の先進性は分かるが、食道がんについてはほとんど触れられていない。

 D「21世紀のがん治療重粒子線治療の基礎と臨床」
  辻井 博彦 編
  かなり専門的な本だが、やはり食道がんについては述べられていない。


 E「自らがん患者となって」
   国立がんセンター名誉総長 杉村 隆著
   食道がんについては、新しい知識は得られなかった。

 F 人体スペシャル「胸部の地図帳」佐藤 達夫著
   食道のある胸部の人体構造をビジュアルに知ることができる。かなり専門性が高い
   内容だがイラストがきれいで興味を持って勉強することができた。
   食道と他の臓器の位置関係、リンパ節の分布状況などがわかる。
 

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